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「白いページ」から抜粋

開高健のエッセイを読んでいる。


「解禁する」

(あらゆる指導者、あらゆる為政者は、古来、どれくらい性表現をタブーとしてきたことか。そのためにどんな美しく、また、清純、また、厳格と見えるスローガンを掲げてきたことか。しかし、こと表現の自由については、これまでのところ、史上もっとも革命的な政府はレーニンのそれでもなければ、毛沢東のそれでもなく、ホー・チ・ミンのそれでもない。デンマーク政府である。“革命なき革命を”という名句を編みだしたのは第二次世界大戦後のイギリスの労働党だが、デンマーク政府はおおげさなことは何も口にしないで、どんな革命の指導者も頭から禁止してしまうことしか考えなかったことを、平然として人民に許したのである。
 それでいて、その結果、デンマークにはべつに何事も発生しなかった。フリー・セックスを認め、ポルノを認め、いっさいがっさい人民に公然と大股開きをすることを認めたのだが、だからといってその社会に流血や叛乱や解体は何ひとつとして発生しなかったのである。むしろ、ポルノ屋は夢中になって工夫と開発に没頭した結果、誰も何もいわないのに自分から自粛するよりほかないことになったのである。幽霊の正体見たり枯尾花というところか。

これまでも永い永い禁忌の歳月のあいだにどれだけ多くの英才や奇才がこのために迫害されて散っていったかを考えあわせると、いったい歴史とは何なのだろうかと、数万回繰りかえした問いをあらためてもう一度繰りかえしたくなってくる。人間は残念なことに、また、奇妙なことに、根源的に相反併存の動物であって、何かを得れば何かを失うということを際限もなく繰りかえしてきたし、いまも繰りかえしつつあり、ときにはそのために死山血河、眼も口もあけていられないような腐臭のなかでいったりきたりしている。そのあげく手に入れるものは、狂熱がおさまってしばらくたってからふりかえってみると、それが手に入れられなくて七転八倒していたときと本質においてさほど大差ないといいたくなるようなものばかりである。)


人の営みを「しゃあないなあ」みたいな視線でながめているかのようなのである。
感心しきりとともにほほえみが浮かぶような、はねまわるような文体がなんともいい。
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